川内原発の火山審査について、火山審査を白紙とし、審査を一からやり直すよう求める緊急要請への賛同(団体・個人)を募っています。要請書は8月30日に一旦提出していますが、賛同を9月1日24時に締め切り、賛同を添えたものを9月2日午前9時半に原子力規制委員会に改めて直接手渡しで提出します。 川内原発・適合性審査火山影響評価に関する緊急要請 原子力規制委員会委員長 田中 俊一様 原子力規制委員会委員長代理 島﨑 邦彦様 火山活動のモニタリングに関する検討チーム御中 要 請 事 項 一.川内原発の火山影響評価はこれを白紙とし、審査を一からやり直すこと。火山審査に際して、火山学者を検討の場に加えること 一.検討チーム第一回会合における指摘事実から、九州電力の申請はその根拠が失われ、火山ガイドの要求も満たさないことが明らかになったことから、これの許可をしないこと 一.9月2日に「基本的考え方」をまとめるのはやめ、第一回会合での指摘事項について、火山検討チームでさらに検討を続けること 要 請 理 由 原子力施設における火山活動のモニタリングに関する検討チームの第一回の会合が8月25日に開催されました。会合は、実質的に川内原発の適合性審査火山影響評価(以下「火山審査」)についての検討の場となりました。 会合の中で、藤井敏嗣東大名誉教授からDruitt et al.(2012)(以下「ドルイット論文」)の紹介とコメントがありました。「ドルイットのこの論文は、3,500年前のサントリーニ火山のミノア噴火では、準備過程の最終段階の100年間に数~10km3のマグマ供給があったということを述べただけで、カルデラ一般について述べたものではない、これは本人にも確認をしましたけれども、一般則を自分は述べたつもりはないというふうに」との発言がありました。 さらに藤井氏から、ドルイット論文に即して、マグマ溜まりが沈降するなどし、マグマの供給に見合うだけの地表の隆起が起こるとは限らないこと、マグマ中の水の量について議論をしておらず、将来結論が変わる可能性があること、岩石学的調査では追試は行われないことから、ドルイット論文に反論がないからといって、それが正しいとみなされたわけではない旨の指摘がありました。 これは、川内原発の火山審査の結論を左右する重大な指摘です。というのも、まず、これも藤井氏が会合で指摘していたように、ドルイット論文は、火山審査に関する九州電力の以下の主要な3つ主張の根拠とされています。 (1)原発の運用期間中に巨大噴火が発生する可能性は十分に小さい (2)モニタリングにより巨大噴火を知ることができる (3)予知をしてから噴火までに核燃料を搬出するための十分な時間がある そして、そのいずれもが、ドルイット論文に書かれていることがカルデラ噴火一般に適用でき、よって南九州のカルデラにそのまま適用できること、そしてマグマの供給がそのまま地表面の地殻変動に現れることを前提としているからです。 火山影響評価ガイドは、立地評価において、「設計対応不可能な火山事象が原子力発電の運用期間中に影響を及ぼす可能性が十分に小さいと評価できない場合には、原子力発電所の立地は不適と考えられる」とし、十分に小さいと評価された場合でも「火山活動のモニタリングと火山活動の兆候把握時の対応を適切に行うこと」を条件としています。九州電力の申請内容は、巨大噴火の可能性が十分に小さいこと、兆候把握時の対処方針のいずれについても、その根拠が崩れたのです。よって、火山ガイドの要求を満たしているといえず、申請を認めることはできません。 原子力規制庁は、検討チームの9月2日の第二回の会合において「基本的考え方」をまとめるとしています。第二回でいきなり「まとめ」というのは非常に不可解です。これがもし、川内原発の火山審査に関わる事項はさっさと終わらせてしまおう、あるいは、川内原発については審査書が確定する前に火山学者の意見を聞く場を設けたことを既成事実にしよう、ガス抜きの場としようというのであればとんでもないことです。 第一回の会合で明らかになったことは、川内原発の火山審査について、九州電力の申請内容には根拠がなく、火山ガイドの要求も満たしていないこと、審査を白紙とし、一からやり直す必要があること、そして、これまで火山の専門家を排除してきたことにやはり問題があったということです。